タイトル厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「Menkes 病・occipital horn 症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発に関する研究」平成23-24年度 総合研究報告書
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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「Menkes 病・occipital horn 症候群の実態調査、早期診断基準確立、治療法開発に関する研究」平成23-24年度 総合研究報告書
Occipital Horn Syndrome (OHS、OMIM# 304150)の診断・診療指針診断指針筋力低下、歩行障害の男子では、本症を疑い精査する(Class I, Level B)。1.頭部単純側面X線のoccipital hornで本症を強く疑うことができる。ただし、年少児では本所見は見られない場合がある(Class I, Level B)。2.上記1.2.に加えて血清銅、セルロプラスミンが低値であれば、本症と診断できる。ただし、血清銅、セルロプラスミンが基準範囲でも本症を完全には否定できない(ClassI, Level B)。3.培養皮膚繊維芽細胞の銅濃度高値、または/および遺伝子診断で確定診断される(ClassI, Level A)。治療指針1.現在、有効な治療法は確立されていない。2.ヒスチジン銅皮下注射とジサルフィラム経口投与の併用療法が1例で試みされているが、明らかな治療効果は認められていない(Class IIb, Level C)。I.病態本症は1975年にLazoffらによって、はじめて報告された1)。Ehlers-Danlos syndrome typeIX、X-linked cutis laxaとも言われていた2-4)。銅は生体に不可欠な必須微量元素で、銅が欠乏すると銅酵素の活性が低下する。成人の銅の1日推奨量は0.9mgとされている5)。腸管から吸収された銅は肝臓に取り込まれ、肝臓からの銅の一部はセルロプラスミンとして血液中に分泌されるが、大部分は胆道へ排泄される。尿中への銅の排泄はごく少量である(50μg/日以下)。血液中では、血清銅の約90%はセルロプラスミン結合銅で、残りの約10%はアルブミンやアミノ酸と結合している(図1)。血清中の銅は様々な細胞に取り込まれ利用される。様々な細胞では、細胞膜に存在する銅輸送トランスポーターであるCTR1で細胞内に取り込まれる。サイトソルに取り込まれた銅は、COX1、CCC2、ATOX1(HAH1)の銅シャペロンにより、それぞれミトコンドリアのチトクロームCオキシダーゼ、サイトソルのZn/Cuスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ゴルジ体膜にあるATP7AまたはATP7Bに運ばれる(図2)。ATP7AとATP7Bは構造が非常に類似しており(図3)、サイトソルからゴルジ体への銅の輸送を司っているが、ATP7Bは肝細胞で作用しており、ATP7Aは肝細胞以外のほとんど全身の細胞で作用している。occipital horn症候群(OHS)はATP7Aの遺伝子異常であり、Menkes病の軽症型で、ATP7Aにある程度の残存活性がある6,7)。ATP7Aが機能しないと、銅はサイトソルからゴルジ体内に輸送されない。その結果、銅はサイトソルにメタロチオネインと結合して蓄積し、ゴルジ体は銅欠乏になる。ゴルジ体の銅欠乏により、分泌銅酵素の活性低下をきたす(図4)。本症では、ATP7A蛋白に20-30%63